電源コラム vol.12「限られたスペースへの挑戦:スイッチング電源小型化を実現する技術」

現代の電子機器は、より小型で高性能であることが求められています。それに伴い、電源ユニットも小型化の要求が年々高まっています。特にカスタム化されたスイッチング電源においては、限られた実装スペースの中で、いかに効率良く電力を供給し、必要な機能を実装するかが重要な課題となります。
今回のコラムでは、この小型化を実現するためのキーとなる技術について解説します。
1. 高周波化技術:受動部品の小型化
スイッチング周波数を高くすることで、インダクタやコンデンサといった受動部品の値を小さくすることができ、結果として部品そのもののサイズダウンに繋がります。
● 小型化の原理
スイッチング周波数(fs)が高くなると、必要なインダクタンス(L)は概ね「1/fs」に比例して小さくなり、必要なキャパシタンス(C)も同様に小さくなる傾向があります。
これにより、体積の大きな磁性部品や電解コンデンサの小型化が期待できます。
● 高周波化の課題と対策
・スイッチング損失の増加
スイッチング周波数が高くなると、MOSFETなどのスイッチング素子におけるスイッチング損失が増加します。
これを抑制するためには、低損失な高速スイッチング素子の選定や、ソフトスイッチング技術(ゼロ電圧スイッチング(ZVS)、ゼロ電流スイッチング(ZCS)など)の導入が有効です。
・EMIノイズの増加
高周波成分が増えるため、EMI(電磁妨害)ノイズ対策がより重要になります。
適切なフィルタ設計やシールド対策が必要となります。
2. 高集積化技術:部品点数の削減と実装面積の縮小
複数の機能を1つのICに統合することで、部品点数を削減し、実装面積を小さくすることができます。
● パワーICの活用
制御回路、MOSFETドライバ、保護回路などを1チップに集積したパワーICを利用することで、周辺部品を減らし、基板面積を削減できます。
近年では、MOSFETを内蔵したパワーICも登場しており、更なる小型化に貢献しています。
● SiP(System in Package)/ MoP(Module on PCB)
複数の半導体チップや受動部品を1つのパッケージやモジュールに集積する技術も、小型化に有効です。
特に、制御ICとパワーデバイスを近接配置することで、配線インダクタンスを低減し、ノイズ特性の改善にも繋がります。
3. 高密度実装技術:基板レベルでの小型化
基板の実装密度を高めることで、電源ユニット全体の小型化を図ります。
● 両面実装、多層基板
部品を基板の両面に実装にし、多層基板を用いることで、限られた面積に多くの部品を配置できます。
● 表面実装部品(SMD)の活用
リード線を持つ部品(リード部品)に比べて、SMDは実装面積を小さくすることができます。
● 部品内蔵基板
基板の内部に抵抗や容量などの受動部品を埋め込む技術も、更なる小型化に貢献する可能性があります。
4. 最新の部品技術:小型で高性能な部品の採用
近年、小型でありながら高性能な部品が開発されています。
これらの最新部品を積極的に採用することで、電源ユニットの小型化と高性能化を両立できます。
● 小型・高効率な磁性部品
小型化されたフェライトコアや金属磁性体を用いたインダクタ、トランスなどが開発されています。
● 小型・高容量のコンデンサ
MLCC(積層セラミックコンデンサ)の高容量化や、小型化されたフィルムコンデンサなどが利用されます。
● GaN(窒化ガリウム)/ SiC(炭化ケイ素)パワーデバイス
従来のシリコン(Si)デバイスに比べて、高周波特性や低オン抵抗に優れており、高効率かつ小型の電源設計を可能にします。
| 特性 | 従来のSi (シリコン) |
GaN (窒化ガリウム) |
SiC (炭化ケイ素) |
|---|---|---|---|
| スイッチング周波数 | 低~中 (~数百kHz) |
高~超高 (~数MHz) |
中~高 (~1MHz) |
| 電力損失 | 大きい | 極めて小さい | 小さい |
| 得意な領域 | 汎用 | ACアダプタ データセンター等 |
EV 産業機器 鉄道等 |
| メリット | 安価で実績豊富 | 圧倒的な小型化 高効率化 |
高耐圧 大電流 高温動作 |
まとめ
スイッチング電源の小型化は、単に部品を小さくするだけでなく、回路設計、部品選定、実装技術など、多岐にわたる技術の組み合わせによって実現されます。実装スペースという制約の中で、いかにこれらの技術を最適に活用するかが、カスタム電源設計における重要なポイントとなります。
今後も、小型化に貢献する新しい技術動向を注視し、お客様のニーズに応えるコンパクトな電源ユニットの開発に貢献してまいります。カスタム電源をご検討の際は、ぜひ当社へお問い合わせください。
最後までお読みいただきありがとうございました。次回もお楽しみに!
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